2007年6月21日に公開された「環境・エネルギー課題解決のための賢人会議」での小宮山宏東京大学総長の基調講演に、感動を覚えた。その後、カンブリア宮殿に出演した総長も、口をついて出る言葉が小気味よかった。
そこで、前者の内容をメモしておくことにした。
課題先進国 †
世界でまだ誰も解決したことのない課題が日本には溢れている
ヒートアイランド現象 †
- 1万6000人もの人が亡くなったフランスの熱波についても、37~38℃が1週間ほど続くという現象自体は、東京に住む我々からすれば大したことはないと言える。この問題の先進国である国から熱波に対応するシステムを導入すれば解決する
- 日本が今遭遇しているヒートアイランドは世界一ひどい現象なので、これをどのように解決するかというとき、どこの国を探してもモデルはない
エネルギー †
- 日本は世界の中で最もエネルギー資源がなく、その他にも、廃棄物の増加、環境汚染、少子化、高齢化、といった多くの課題を抱えている。
- 近い将来、中国やインドも含め、こうした「資源が乏しく人口密度の高い高度に産業化された先進国」という状況が、世界中に訪れる。
- 現在の日本の姿は未来の地球の姿であり、日本が抱える現在の課題は、未来の世界が抱える課題
日本のエネルギー効率 †
- GDPの割合に比べたCO2の排出量割合からは、日本が極めてエネルギー効率の高い国
- 2004年の日本のGDP(国内総生産)は世界の11%(第2位)。日本の二酸化炭素(CO2)排出量の割合は世界の4.7%
- 米国の場合は、GDPが世界の4分の1に対してCO2排出割合も4分の1ほど
- 中国に至っては、4.6%のGDPに対して17.4%も排出しており、現在では20%を超えていると思われる
- 1960年ごろと比べ、現在同じ1tのセメントを生産するためのエネルギー消費量は約5割も減っている
- 米国は、同じ1tのセメントを生産するのに、いまだに日本の60年代レベルのエネルギーを消費している
- それでセメント産業が成り立つのは米国が、エネルギー価格を安く抑える政策を取っているから
- 日本車は欧米車に比べ、燃費が約20%も良くなっている
環境問題解決力 †
- 火力発電所で1kW時の電気を生み出すのに硫黄酸化物(SOx)を何グラム排出しているかという国際比較
- 日本:0.2g/kW、米国:3.7g/kW、英国:2.6g/kWなど
- 北九州の空、洞海湾、水俣、藤前干潟、などは環境被害を克服できた例
課題先進国としてのマインド †
- もはや、米国や英国はモデルではない。自分たちで、自身のモデルを作るのだというマインドに立たなくてはならない。
- 日本が今遭遇している課題を自ら解決することで、それが新しいモデルとなり、やがて同じ課題に遭遇する世界に導入される
- それが日本の世界史的役割であり、世界の敬意を集め、国際競争力の源泉となる